澳门现金网,正规靠谱的彩票app

图片

グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



副学長リレーエッセイ 第3回(酒井 敏)


ホーム >  大学案内 >  大学広報 >  副学長リレーエッセイ >  副学長リレーエッセイ 第3回(酒井 敏)

正しさは伝わらない、楽しさはうつる

とあるお酒の席で、たまたま法学の先生と隣あわせになりました。私は、話のネタに困って、苦し紛れに「どんな研究をされているんですか?」と月並みな質問をしたところ「法律をクソ真面目に守ると、なぜアホなことになるのか、ということを研究しています」という全く予想外の答えが返ってきました。真意を尋ねると「たとえばPL(製造物責任)法。これがあるために、メーカーはどうでもいい注意書きをたくさん書かざるを得なくなり、マニュアルが分厚くなる。結局、誰も読まないので事故が起こる。誰も幸せになっていませんよね」ということでした。要するに法律を厳格に守るとろくなことにならないので「ちょっとぐらい、ええやんか」というのです。これは法学だけの話ではありません。「資本主義は不純物によって安定化する」というのは、有名な経済学者の言葉です。どうやら、まじめな学者がまじめに突き詰めて考えると、「まじめすぎると、うまくいかない」という結論に至るようです。
一方で、その「ちょっと」が世界を大きく変えるという話もあります。バタフライ効果です。これは、天気予報モデルの研究から発見されたもので、決定論的カオスと呼ばれます。天気予報は現在の状態をもとに、明日の天気を予想し、それをもとに、明後日の予想をするというように、「結果」を「入力」に戻して、同じ計算を繰り返します。同じように、6つの電卓で簡単な同じ計算を繰り返した動画があります。当然、すべての結果は同じになるはずですが、結果はすべてバラバラです。何が起こったかというと、電卓の最後の桁には誤差があり、その誤差が1回計算するごとに2倍になるので、ドラえもんのバイバインよろしく、あっという間に計算結果を誤差で埋め尽くしてしまうのです。(のび太が食べ残した1つの栗饅頭は5分で2倍になり、約1日で宇宙を埋め尽くします)電卓のそれぞれ1回の計算は、10桁もの精度で正しく計算しているのですが、それを繰り返すと、まったく無意味な計算になってしまいます。つまり、カオスとは、正しさを正しく「うやむや」にするメカニズムなのです。ちょっと怖いと思うかもしれませんが、逆に「将来には無限の可能性がある」と思えば、ハッピーじゃないですか?
人間社会にしても、自然界にしても、お互い相容れない多様な価値観を持つプレイヤーが複雑に絡みあって動いている生態系です。誰も設計図を持っていないし、コントロールもできません。まさにカオスです。それでも全体として、何らかの秩序が成立していることが不思議なところです。「いろいろ多様な人がいて、すばらしいですね」というのは、「素晴らしい」という評価ができる時点で全然多様ではなく、「お前の顔なんか見たくない」と油と水のように価値観の相容れない者同士がドレッシングのように混ざって何かを成立させているのが生態系です。当然、一つの「正しさ」は全体に適用できません。強引に正しさを主張すれば、分断が起こります。実はカオスのような現象は、相容れない世界の「狭間」に出現します。この「うやむやにする力」こそ、世界をバラバラにしない秘訣なのかもしれません。
タイトルの「正しさは伝わらない、楽しさはうつる」は、数学者で随筆家の故?森毅先生の名言です。何らかの思考能力を持った生物にとって、うまくいったことを記憶したり、論理的に考える「正しさ」は、生存に有利に働きますが、カオスな世界ではその効力は限定的です。状況が変わった時、その能力はむしろ不利に作用するかもしれません。それに対して「楽しさ」は、論理を超えて伝播します。そして、その楽しさは、自分が属する正しい世界の外側に別の世界があることを常に認識させてくれます。これが、視野を広げ変化に適応する能力に繋がります。さらに、その「楽しさ」はある種の「恐怖」と同居している気がします。予期せぬことが起こったり、見知らぬ世界に足を踏み込んだ時、異変を察知して恐怖を感じますが、「楽しさ」とはその恐怖を乗り越えるために動物が獲得した本能的な能力なのではないかと思うのです。すなわち、ちょっと怖いカオスな世界で「無限の可能性がある」と感じて前に進む能力です。ブレーキとアクセルを同時に踏むような、ちょっと野蛮な能力ですが、AIが進歩して世の中が急激に変わりそうな今こそ、この「野蛮な楽しさ」を感じる能力が人間の価値に繋がるのではないでしょうか?おそらく、AIがこの能力を獲得することは相当に難しいと思いますから。

*電卓カオス with Take Five【YouTube】
https://www.youtube.com/watch?v=AOebh1uhFdY(外部サイトへリンク)

執筆者紹介

酒井敏副学長

酒井 敏
静岡県清水市(現静岡市清水区)出身。1980 年 京都大学理学部卒業。理学博士(京都大学? 1986 年)。専門分野は地球流体力学。大気?海洋の力学的構造やフラクタル日除けの研究?開発に取り組む。京都大学教養部助教授、同総合人間学部助教授、同高等教育研究開発推進センター助教授、同大学院人間?環境学研究科教授などを歴任し、2021年本学の副学長に就任。
(2025年10月16日)

<第2回

モバイル表示

PC表示